「将来、認知症になったら財産管理をどうすればいいの?」
「施設に入った後も、信頼できる人にお金の管理や手続きを任せたい」
このようなご相談の中で、最近よく耳にするのが「できれば法定後見ではなく、任意後見にしておきたい」
というご希望です。
その背景には、成年後見制度そのものが大きく見直されていることに加え、本人や家族、介護施設などが感じている「法定後見の使いにくさ」があります。
今回は、2026年に成立した成年後見制度の改正にも触れながら、なぜ任意後見を希望する方がいるのかについて、行政書士の立場から分かりやすく解説します。
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1.成年後見制度は大きな転換期を迎えています
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない方の財産や権利を守るための制度です。
これまでは、本人の判断能力に応じて、
- 成年後見
- 保佐
- 補助
という法定後見制度が設けられていました。
しかし、成年後見制度については、
「一度利用すると、本人が亡くなるまで利用し続けなければならないのではないか」
「本人が必要としている範囲を超えて制度が利用されることがあるのではないか」
「本人の意思が十分に尊重されていないのではないか」
といった課題が指摘されてきました。
こうした問題を背景として、法務省では成年後見制度の見直しが進められ、2026年には「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」が公布されました。
今回の改正では、成年後見制度について、本人にとって必要な範囲で利用するという考え方がより明確になっています。
つまり、成年後見制度は現在、大きな転換点にあると言えるでしょう。
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2.それでも「任意後見を選びたい」という人が多い理由
では、なぜ法定後見ではなく任意後見を希望するのでしょうか。
大きな理由の一つが、
「自分が元気なうちに、将来のことを自分で決めておきたい」
という考え方です。
任意後見制度では、本人に十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ任意後見人となる人を自分で決めておくことができます。
つまり、
「誰に任せるのか」
「どのようなことを任せるのか」
を、本人の意思で決めておけるのです。
一方、法定後見では、家庭裁判所が後見人・保佐人・補助人を選任します。
保佐人や補助人についても、必要に応じて代理権を付与することができますが、その範囲は法律上・家庭裁判所の審判上の枠組みに従う必要があります。
「将来、自分のお金や生活に関することを誰に任せるか、自分で決めておきたい」
という方にとって、任意後見は大きな意味を持ちます。
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3.「後見人が本人に会いに来てくれるのか」という不安
実際に成年後見について相談を受けていると、
「後見人は本人にちゃんと会いに来てくれるのでしょうか?」
という質問を受けることがあります。
また、
「保佐人や補助人になった人が、本人のところにあまり来てくれないと聞いた」
「施設側から連絡しても、なかなか対応してもらえないケースがあると聞いた」
という話を耳にすることもあります。
ただし、ここは誤解のないように注意が必要です。
法定後見だから、必ず本人に会いに来ないというわけではありません。
後見人等には、本人の意思や心身の状態、生活状況などに配慮して職務を行うことが求められています。
また、後見人等には家庭裁判所への報告義務もあります。裁判所には成年後見人・保佐人・補助人が使用する報告書式も用意されています。
したがって、
「法定後見=会いに来ない」
「法定後見=報告をしない」
と一律に考えるのは適切ではありません。
しかし、本人や家族、施設側からすると、
「誰が本人を支援してくれるのか」
「どの程度の頻度で本人の状況を確認してくれるのか」
という点が見えにくいことが、不安につながる場合があります。
このような不安から、
「だったら元気なうちに、信頼できる人を自分で決めておきたい」
と考える方が出てくるのは、自然なことだと思います。
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4.「財産管理の内容を明確にしてほしい」という施設側の希望
介護施設などから見ると、本人の預金や生活費の管理が誰によって行われているのかは、とても重要な問題です。
例えば、
- 施設利用料の支払い
- 医療費の支払い
- 日用品の購入
- お小遣いの管理
- 公共料金の支払い
- 年金や預金の管理
などがあります。
施設としては、
「誰に連絡すればいいのか」
「お金の支払いについて誰が判断するのか」
「本人のお金がどのように管理されているのか」
を明確にしておきたいと考えます。
そこで、本人が元気なうちに、
「将来、判断能力が低下した場合には、この人に財産管理をお願いする」
という仕組みを作っておく任意後見制度が注目されることがあります。
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5.任意後見なら「自分で選べる」という大きなメリット
任意後見制度の大きな特徴は、本人が任意後見人になる人をあらかじめ選べることです。
例えば、
「長年付き合いのある行政書士にお願いしたい」
「信頼できる親族にお願いしたい」
「専門家に財産管理をお願いしたい」
など、本人の希望に応じて設計することができます。
また、任意後見契約では、本人が将来必要になると考える事務について、あらかじめ契約で定めておくことができます。
そのため、
「誰に任せるか分からない」という不安を減らし、将来の生活について本人自身が準備しておける
という点が任意後見の大きなメリットです。
なお、任意後見が開始すると、任意後見人を監督する「任意後見監督人」が家庭裁判所によって選任されます。
つまり、
「任意後見なら誰にもチェックされない」
という制度ではありません。
任意後見人の仕事については、家庭裁判所による監督の仕組みがあります。
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6.任意後見だけでなく「財産管理等委任契約」も検討する
任意後見を考える場合、もう一つ重要なのが、
財産管理等委任契約
です。
任意後見は、基本的には本人の判断能力が低下した後の支援を想定する制度です。
一方で、
「まだ判断能力はあるけれど、病気や身体的な理由で銀行に行くことが難しい」
「高齢になって、財産管理を誰かにお願いしたい」
という場合には、財産管理等委任契約を組み合わせる方法があります。
さらに、
- 任意後見契約
- 財産管理等委任契約
- 死後事務委任契約
- 遺言
などを組み合わせることで、
「元気なとき」→「判断能力が低下したとき」→「亡くなった後」
までを一連の流れとして考えることもできます。
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7.成年後見制度が「本人中心」に変わっていく
今回の成年後見制度の改正で重要なのは、
「本人に必要な支援を、必要な範囲で提供する」
という方向性です。
成年後見制度は、単に「財産を管理する制度」ではありません。
本人の意思を尊重しながら、
「本人がどのような生活をしたいのか」
「どのような支援が必要なのか」
を考えていくことが重要です。
実際、2026年の成年後見制度に関する政府の検討でも、本人の意思や地域での権利擁護支援、適切な後見人等の選任などが重要なテーマとなっています。
これからは、
「成年後見を利用するか、しないか」
という二択だけではなく、
本人にとって、どの制度をどのように組み合わせるのが最も適切なのか
を考えることが重要になっていくでしょう。
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8.任意後見は「元気なうち」に考えることが大切
任意後見には、一つ大きなポイントがあります。
それは、
本人に十分な判断能力があるうちに契約しておく必要がある
ということです。
判断能力が低下してからでは、本人が新たに任意後見契約を締結することが難しくなります。
その場合には、法定後見制度を利用することが中心となります。
だからこそ、
「まだ元気だから必要ない」
のではなく、
「まだ元気だからこそ、自分で決めておく」
という考え方が大切です。
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まとめ 「誰に任せるか」を自分で決めるという選択
成年後見制度は現在、大きく変わろうとしています。
法定後見制度にも、判断能力が低下した後に本人を守るという重要な役割があります。
一方で、
「できれば自分で信頼できる人を選びたい」
「将来の財産管理について、自分の希望を反映させたい」
「施設や家族にも分かりやすい形で、将来の支援体制を整えておきたい」
という方にとって、任意後見制度は有力な選択肢となります。
特に重要なのは、
任意後見を契約すること自体が目的ではなく、「将来、自分がどのような生活をしたいのか」を考えることです。
行政書士まるいち法務事務所では、任意後見契約だけでなく、
- 財産管理等委任契約
- 死後事務委任契約
- 遺言
- 相続
なども含め、将来の生活や財産管理について一緒に考えるサポートを行っています。
「成年後見について家族で考えている」
「任意後見と法定後見の違いを知りたい」
「施設に入る前に財産管理について準備しておきたい」
という方は、お気軽にご相談ください。
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